当センターで、対象とする主な疾患や検査法・治療
について説明致します。


上部・下部・胆道内視鏡検査を受けられる患者様へのご注意。

(検査予約時に同様の内容を記載した説明文・同意書をお渡ししております)


①内視鏡検査でおこりうる合併症

病理検査のため、組織を一部、採取する(生検)することがあります。止血されていることを確認して、検査を終了しますが、稀に、後から出血し、嘔気、吐血や便が黒くなることがあります。また高周波を用いて病変を切除した場合、切除部分に人工的な潰瘍ができます。治療方法により多少の頻度の差がありますが、潰瘍から出血や穿孔などの合併症をきたす場合があります。合併症が生じた場合は、直ちに最善の処置、治療を行います。万一、重篤な合併症の場合、集中治療や緊急手術などが必要になる場合もあります。


②麻酔薬・鎮静薬を用いた内視鏡検査

内視鏡検査をできるだけ楽に受けて頂くために、検査・処置部位への局所麻酔や、鎮静薬(睡眠薬・麻酔薬・麻薬)の注射を行います。これらの薬の反応で、ふらつき、動悸、痙攣、痺れを起したり、目がチカチカしたりすること、注射薬剤が血管外に漏れ出し、皮膚を刺激することや、唾液が誤って気道に入ってしまい誤嚥性肺炎が起きることがあります。もし万一、起こった場合は、速やかに適切な処置をいたします。また、アレルギーショック薬剤に対する強いアレルギー反応(過敏症)や、深い鎮静状態になり舌が落ち込んだりすることがあります。
患者さんには、以下のことをお願いします。

  • 薬のアレルギーや当日の体調に異常のある方は、必ず検査前にその旨を、医師や看護師にお申し出ください。
  • 苦痛の少ない、やさしい内視鏡検査(鎮痛剤や鎮静剤を使用します)
  • 検査終了後は、目の焦点があわない、眠気を催すなどの症状が急に現れることもあります。外来での検査当日は事故を起こす可能性があるため、絶対に自動車、バイク、自転車等の運転はおやめください。

③抗血栓薬の内服について

これまで抗血栓薬(バイアスピリン、ワーファリンなど)を内服されている患者さんには、内視鏡検査を受けられる際に、処方医と相談し、中止して検査・治療を受けられる場合と、内服継続したまま検査(観察)のみ受けられる場合がありました。しかし、血栓症が起こる危険性の高い患者様では、休薬により血栓塞栓症(脳梗塞や心筋梗塞など)が発生して、時に致命的となったり、重い後遺症を起こしたりする可能性があります。抗血栓薬を内服したまま、組織を採取したり、治療を行った場合の出血のリスクと、休薬した場合の血栓塞栓症のリスクを鑑み、当院では抗血栓薬を内服継続下したままでの検査・治療するための取り決めを、“抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン”を参考にして、下記のように変更致しました。 上部・下部消化器内視鏡検査において、アスピリンなど抗血栓薬1剤の場合は内服継続で、生検をすることがあります(但し、ワーファリンは除く)。 下部内視鏡検査において、アスピリンなど抗血栓薬1剤の場合は内服継続で、電気を用いたポリープの切除などをすることがあります(但し、ワーファリンは除く)。内視鏡検査を受けられる患者様は、内服中の抗血栓薬の内容を確認し、処方医と内服薬の中止・継続・変更につき、よくご相談ください。


1)内視鏡治療の適応と判断された、消化管の腫瘍
  (早期食道癌・早期胃癌・胃腺腫・早期大腸癌・大腸腺腫)
   ① EMR (内視鏡的粘膜切除術)
   ② ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)

(注)腫瘍センターでは、超難治例(穿孔のリスクが高い・長時間を要するなど)では、消化器外科のバックアップのもと、手術室で全身麻酔下に、ESDを行っています。 (注)パス入院 胃ESDでは、3泊4日、あるいは、5泊6日、食道、十二指腸、大腸ESDでは、 6泊7日の入院(治療日の前日入院)が原則です。上部・下部・胆道内視鏡検査を受けられる患者様への、ご注意 (検査予約時に同様の内容を記載した説明文・同意書をお渡ししております)



早期胃癌ESDの適応

絶対適応病変2cm以下の肉眼的粘膜内癌(cT1a)と診断される分化型癌、瘢痕なし<UL(-)>に限る

適応拡大病変(標準治療は外科切除である)
      ① 分化型、pT1a(M)、UL(-)、2cm超
      ② 分化型、pT1a(M)、UL(+)、3cm以下
      ③ 分化型、pT1b(SM1)、3cm以下
      ④ 未分化型、pT1a(M)、UL(-)、2cm以下

(注)外科切除の術死の可能性:胃全摘を含め1%以下ガイドラインの適応基準を 満たせば、転移の可能性は0.7%以下


胃ESDの偶発症

出血:
治療中は適宜、止血しながらESDを行います。
治療翌日などに、内視鏡で、治療部位を観察し、必要なら予防的な処置をします。2か月後に再検して、内服薬の中止を検討します。
(頻度は~10%程度、輸血が必要になるのは、約1%)
穿孔:
治療中はクリップなどで、縫縮します。
保存的治療が可能な場合が多いいものの、緊急開腹処置が必要になることもあります(頻度は~5%程度)
消化管狭窄:
幽門輪4/5周以上の切除となった場合に発生することがあります。
術後早期の予防的内視鏡的バルーン拡張術ステロイド局注

2)緊急止血、あるいは、待機的に止血予防が必要な疾患
  (出血性胃潰瘍・食道静脈瘤)

出血性胃潰瘍(クリップ止血)

潰瘍底に露出血管を認めた場合、クリップで止血したり、薬剤の粘膜下注入などを行って止血します。

食道静脈瘤(緊急時、待機的)
EVL(食道静脈瘤結紮術) 食道静脈瘤出血
EIS(食道静脈瘤硬化療法) 食道静脈瘤

静脈瘤破裂による出血を認めた場合、内視鏡先端に装着したフードで、静脈瘤を吸引後、輪ゴムで結紮(内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL))して、止血します。静脈瘤自体に薬を注入(内視鏡的静脈瘤硬化療法(EIS))することもあります。
また、静脈瘤が破裂する可能性が高いと判断された場合は、待機的にEVLを行います。通常、週1回のEVLを2回行い、最後に、EVL後にできた潰瘍と潰瘍の間の食道粘膜下にEISを行い、再発防止に努めます(地固め療法)。


3)炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)
  バルーン内視鏡による、クローン病の狭窄部拡張

クローン病は腸管に狭窄を起こすことがあり、特に小腸の場合は外科的加療が必要でした。バルーン内視鏡の登場により深部小腸への挿入が可能となり、今まで到達できなかった深部小腸の狭窄病変に対しバルーン拡張術を行うことで外科的加療を回避できる可能性が高くなりました。また、腸管切除後の吻合部狭窄に対してもバルーン拡張術を行うことにより再手術を回避できる可能性もでてきました。
バルーン内視鏡を病変部まで進め,透視下で造影を行い、狭窄病変の評価を行います。拡張術が可能と判断されれば、ガイドワイヤーを挿入し、ガイドワイヤー伝いにバルーンを挿入して透視下で拡張術を施行します。必要に応じて後日追加治療を行うこともあります。


4)小腸疾患(腫瘍・血管・粘膜性病変)

小腸内視鏡
①カプセル内視鏡

このシステムは、カプセル(11x26㎜)、アンテナ・受信装置、ワークステーションと呼ばれるコンピューターやソフトウェアから構成されます。カプセル内視鏡では、1秒間に2枚、約8時間の撮影で、5万枚以上の画像が撮れます。低侵襲の検査であり、今後、大腸などへの拡大が期待されています。モニター画面では、小腸からの出血を認めています。

②バルーン内視鏡

有効長2mの専用内視鏡、バルーン付きオーバーチューブ、バルーンの拡張・脱気用ポンプから構成されます。小腸疾患の部位により、経口的にも、経肛門的にも挿入でき、生検・内視鏡的止血術・内視鏡的拡張術・ポリープ切除などができます。 小腸の腫瘍性病変として頻度の多い、悪性リンパ腫の写真です。カプセル内視鏡では、生理的な条件下で、拡大して病変が観察できます。


5)胆膵疾患(腫瘍・膿瘍・結石)

胆膵内視鏡について

胆道系疾患、膵疾患には診断治療のために胆膵内視鏡を用いることが多くあります。当院では胆膵内視鏡は週4日間検査・治療を行っています。内視鏡ファイバーはJF260V 3本、TJF260、ラジアル型EUS2本、コンベックス型EUS1本、小腸内視鏡各種、経口胆道鏡、膵管鏡を取り揃えています。施行実績として胆膵内視鏡は患者ニーズの増加、侵襲的なEUS処置の本格導入により、2014年度は緊急を含めた胆膵内視鏡処置検査は約800件(ERCP 544件、EUS 257件)施行しております。

当院で施行している胆膵内視鏡処置
① 診断的ERCP、採石処置、胆管炎に対する治療

挿入はワイヤガイドとコントラスト法を併用し、採石目的にはESTを中心としております。総胆管結石治療後の残存有無にはIDUSを用いています。経口胆道鏡による胆管や膵管内の直接観察も施行しております。膵石や膵管処置も積極的におこなっています。急性化膿性閉塞性胆管炎についての緊急ドレナージの受け入れもしております。また、ラジアル型超音波内視鏡を用いた診断は年間200-300件行っております。検査までの待ち時間はほとんどなく1週間以内には検査が可能です。

② 悪性腫瘍に対するステント治療

各種悪性疾患による黄疸の改善のために病状に合わせて各種ステントを選択しております。膵癌治療前の挿入、あるいは挿入後の閉塞機能不全、入れ替えなどについても対応しています。また、胃十二指腸狭窄に対する消化管ステンティングは十二指腸乳頭部に係わることもあり胆膵班で担当しています。

③ 術後腸管に対するERCP処置

当院では小腸内視鏡などを用いた術後胃(R-Y、B-II、PD後、肝移植後、Child再建、今永再建…)におけるERCP処置(胆石、膵石処置)を年間約40例におこなっています。難しい処置ではありますが、各種処置具を用いて高い成功率を得ています。

④ 内視鏡的乳頭切除術(ESP)

Vater乳頭腫瘍の内視鏡切除も積極的に施行しており40例前後の経験があります。膵胆道への進展度をESUにて十分検討し、内視鏡切除、縮小手術、膵頭十二指腸切除術の3段階で適応を判断しております。手術適応症例についても精査は内科で行っております。

⑤ インターベンショナルEUS(IV-EUS)

超音波内視鏡EUSを用いた各種診断・治療手技が日常診療で多く利用されています。診断的IV-EUSであるEUS-FNA(穿刺吸引術)は膵腫瘍、胃粘膜下腫瘍、縦隔リンパ節に対して施行しております。治療的IV-EUSとしては、重症膵炎後膿瘍や腹腔内膿瘍に対する膿瘍ドレナージ、内視鏡的ネクロセクトミーなどを施行しています。IV-EUSは年間40-60件ほど施行しております。

⑥ ESWL、胆道マノメトリー そのほかの特殊な処置

肝内胆管結石、膵石に対してESWLの施行可能な施設です。また、十二指腸乳頭括約筋機能障害(SOD)の診断のための胆道内圧測定装置を常備しており、紹介をいただいています。